「いくら闇魔法を使っている者を捕らえるためだとはいえ……。命を吸い取る術をかけられている者の婚約者として訪れるなんて……。もし、アレッシェラ様になにかがあったら」
「なに。いくら闇魔法を使う者だとはいえ、私にかかればたいした敵ではない」
いつも真面目な側近を安心させるように微笑む。
「ただ、術をかけている者が誰かわからないため、そういうことにして相手の様子を見ようと思うのだ」
(――それに、今までの中で、一番可能性のありそうな人物だ)
正直、夢に出てくる運命の相手かどうかはわからないが、これまで求婚に来た者たちとは、初対面の感覚が全然違った。
とりあえず、もう一度会って、確かめてみるだけの価値はあるだろう。
そう心の中で頷くと、ルイサは聞いたアレッシェラの言葉に、ホッとしたような表情を見せた。
「そうですわね……! それに、アレッシェラ様には、神々がついておられますし。私、ジャミマス神のお姿を最近見かけないので、変に心配してしまって……」
(あいつ、逃げたな!)
思わず心の中で叫んでしまう。きっと、フロールの伝言を黙っていたことがばれたので、まずいと思って、姿を見せないのだろう。
(あやつ……もし現れたら、伝え忘れていた内容について、もっとつっこんでやろうと思っていたのに……!)
そうすれば、レナールがその相手かどうかが早くにわかるはずだ。それなのに、こういう時のジャミマス神の危機察知能力は本当に早い。
とはいえ、神々の気まぐれは今に始まったことではないので、毎日のように顔を見せることもあれば、呼び出さない限り長期間出てこないことも珍しくはない。
(しかし、今回は最初からしらばっくれていたことを考えると、おそらく心当たりがあるのだろうな)
ふん、とアレッシェラは腕を組んだ。長い連珠を巻いた髪が、後ろで馬車の背もたれにあたる。
「どうせちょっと分が悪いと思って、姿を現さないだけだ」
いざとなれば、天から引きずり出してやると顔をしかめながら呟くと、同時に、馬車はカクンと道を曲がった。
