「真面目で温和、しかも顔がよく、頭も優れている――そんな人物を、わざわざ今まで交流がなかったこんな年上の聖女に娶せたいと言うのならば、そちらにとってもなにか事情があるはず」
さすがに、辺境伯ともあろう者が、運命の相手というロマンチックな言葉の響きに惹かれて申し込んだということはないだろう。神殿の加護か、大聖女の後ろ盾かと暗に匂わせると、相手の眉が急に苦悩を告げるように深く寄せられた。
「はい。実は――レナールは、結婚したら、その相手が早死にするという予言がされておりまして……」
「ほう」
聞いた内容に、ぴくりとアレッシェラの片眉が上がった。
「十歳の時、レナールと縁が繋がっている者は、誰であろうと早死にするという予言がなされたのです。家族の誰も、それを真面目に受け取りはしなかったのですが、予言を気にしたレナールが家出をするという騒ぎが起き、連れ戻す条件として、やむを得ず、書類上だけ勘当ということにしたのです。もちろん、本当にレナールを捨てるつもりなどありません。ただ、それ以来レナールとの結婚は生贄になるのも同然だという噂が流れ――」
「それで、百八十歳になり不老長寿と言われる私ならば、その噂にも臆しないのではないか――と踏んだのか?」
「おっしゃるとおりです。私は、レナールが伴侶を早死にさせるなどという予言を信じてはおりません。息子には幸せになってもらいたい。ですが、本人がその予言を気にして、どんな縁談も受けようとはしないのです」
「ふむ――」
「今日は、どうしても避けられない招待と偽って、アレッシェラ様に目通りをさせようとなんとかここまで連れてきたのですが、あの蝙蝠が襲ってきたのを見て、自分が側にいるとやはりよくないことが起こると、遠くに離れようとしまして……」
「それで、連れ戻そうとしていたと」
「はい――とにかく、自分のせいで、周囲に災いが起こるのではないかと心配しているのです」
ふむ、とアレッシェラは少し首を傾げた。
