貴族の昼食に使われる個室に入り、勧められた深緑の椅子にアレッシェラが座ると、グラフォーレ辺境伯ガレオは、お茶とお菓子を運ばせる。そして、自らも座るや否や、眉を寄せた顔で、両手を組んで突然話を切り出した。
「実は、大聖女アレッシェラ様が婚活をなさっているという噂を耳にしまして――」
「婚活……」
自分のみならず、側の椅子に座ったルイサも思わず言葉がはもっている。今は神力でガレオには姿を見えなくしているが、空中に浮いているジャミマス神は噴き出す寸前だ。
「事実だが、随分と歯に衣着せぬ表現をするのだな、グラフォーレ辺境伯よ」
怒る気にもなれず、いつもどおり大聖女としての薄い笑みを浮かべながら答えると、相手は言い方が悪かったと思ったのだろう。
「俗な表現となり、申し訳ありませんでした。訂正いたしますと、大聖女アレッシェラ様が、側に置いて終生愛でられる美丈夫を募集されていると伺いまして――」
もっと微妙な表現になった。
なぜ、伴侶を探しているのが、そんな話になっているのだろうか。
「まあ、これなら婚活と言い換えたくなるのも、もっともですわよねえ……」
側に座ったルイサが、頬に手をあてている。その側で、ジャミマス神は姿を隠したまま大爆笑だ。
『さすが、大聖女アレッシェラ! 普通に結婚相手募集とは思われてはいなかったのか!』
『うるさいぞ、黙れ!』
神力を扱う者にしか聞こえない心話だからといって、言いたい放題だ。
(だが、まさか、愛玩する対象として、探していると思われていたとは――!)
道理で、やけに女慣れした者たちばかりだった。これならば、どうして縁談の来る全員が、女性問題を抱えるほどのイケメンたちばかりだったのかがわかる。思わず額に手をあてて俯き、一度はあと息を吐き出した。
