「アレッシェラ様!?」
驚いたルイサとジャミマスの顔が遠くに見えるが、あまりにも一瞬のことだったので、体のバランスを立て直すことができない。
「くっ――」
背中が下だった体の向きを斜めに変えて、少しでも衝撃を和らげる方法を探した。そのおかげで、下にある大木の伸びている枝が目に入る。
「あそこならば――」
枝を掴んで、地上へと下り立てるはずだ。だから、節くれた枝に手を伸ばそうとしたのに、その瞬間、また黒い蝙蝠が横からアレッシェラの顔めがけて飛んでくるではないか。
「危ない!」
どこからか叫ぶ声と同時に、黒みがかった銀色の髪の人影が、自分の側へと駆け寄ってくる。咄嗟に呪文の詠唱が聞こえた。
「――え?」
一瞬なにかを感じた。
かろうじて手が枝に触れる。掴むと折れてしまう太さだったので、速度の勢いを殺しただけで乾いた樹皮を離すと、その落ちていく体がふわりと浮かび、二本の腕に受け止められる。
(この感じは――……)
ひゅんと、側を黒い蝙蝠が通っていく。それを目の端に見ながらも、包まれた腕には、なぜかひどく懐かしい感じがした。
「大丈夫?」
その瞬間、抱き寄せてかばった相手の視線が、アレッシェラの瞳を捉える。
瞬間的に、不思議な感覚がアレッシェラの中を走り抜けた。
なんだろう、名状しがたい感覚だ。懐かしいような、泣きたくなるほどなにかがこみ上げてくるような――名前のつけようもないその感情に一瞬瞳を奪われる。すると、受け止めた美しい顔立ちの青年もなにかを感じたのか、青紫の瞳で同じようにアレッシェラを見つめたまま、言葉を途切れさせている。
しばらく黙って見つめ合い、ふと相手の口が動いた。
「君……どこかで出会ったことがある……?」
