引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

 月の光の中に持ち上げると、レナールの手からは、今までは見えなかった黒い粒が浮き上がって消えていく。手だけではない。顔からも、首からも。おそらく全身についていたのだろう。服の隙間から外に出て、やがて月光の中で消えていく。

「魔物を焼くのと同時に、その魔物がかけていたあなたへの術も焼けた。だから、これからはもうあなたを通じて、誰かの命が吸われるということはないんだ」

 持った手をゆっくりと頬に添えながら言うと、レナールの顔が驚いたようになった。

「だから、安心して私との婚約を認めてくれ」

 そう言うと、丸く開いていた目が、ぐしゃっと泣くように歪んでいく。

「本当に……俺と婚約を……?」

 いくら運命の相手と言われたからって……と、震える声で呟いている。

「だけど、俺は前世で……天界で、やってはいけないことをした男だって……。それもあなたを好きすぎて……。そんな男を……」

「それが本当だったとしても、過去のことだ」

 その姿に、アレッシェラは穏やかに微笑んだ。

「それに、きっと私たちは両思いだった。そう思うんだ」

「そんな――記憶があるわけではないのでしょう?」

「ああ」

 震えながら問うレナールに強く頷く。

「記憶はない。だけど、きっとそうだったと思う」

 夢の中で――アレッシェラは繰り返し、自分は相手が思っているのよりも、本当はずっと好きだったのだと伝えたがっていた。転生してもそれを忘れなかったのは、もう一度会って伝えたかったからに違いないだろう。

 ――あなたが好きだと。