引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

「あとは、公爵夫人とニコルが、真実同一人物かどうかを見極めようと思っていたのだが」

 アレッシェラの鋭い眼差しに、ニコルが禍々しい微笑みを浮かべる。

「どうやら魔物に対しての知識があるようね。小賢しい――」

 美しい口元に、笑みで鋭い牙を際立たせる。

 次の瞬間、細いナイフのように伸びた指で、アレッシェラに向かって走り寄ってきた。伸びた開いた手の中には、いくつもの蛭のようなものが生えている。蛭の吸盤のような口が動き、針のような指とあわせて、アレッシェラに襲いかかろうとする。

「危ない!」

 咄嗟にレナールがアレッシェラを引き寄せて、体に抱え込む。

「――――!」

 呪文が空間に弾け、それと同時にニコルとの間に、きんと空気の波動が起こった。

「こんな初級技! いくらあなたの力が大きくても、こんな初級技ならばかわせるのよ!」

 そう叫ぶと、ナイフのように伸びた長い指に魔力を乗せて、レナールが使った敵を空気の波動で跳ね返す術を切り裂いてくる。

 ざんと空間に別の音が響いた。

 一筋、アレッシェラの髪が爪で落ちる。

 ごくわずかな量だ。おそらく数本だろう。それでも、レナールの顔は真っ青になった。

「アレシナ!」