引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

 レナールが呟いた言葉で、アレッシェラはまだ本名さえ話していなかったことに気がついた。

「あなたとは、まだまだ話さなければならないことがいっぱいだな」

 そう言う間にも、闇が一際暗いほうから音がする。

 ドンドンという音は、おそらく扉からだろう。

「レナール様」

「テディス公爵夫人?」

 声で誰かがわかったらしい。

 慌てて目をやると、そちらに行くべきかで悩んでいる。

「この扉を開けてくださいませ。お茶をお持ちしましたの」

 華やかに響いた声に、戸惑った顔をしているレナールの腕を押さえる。

「開けたらダメだ」

 止めたが、すぐに鍵をガチャガチャと鳴らす音が響いた。おそらく合い鍵の束だろう。持っていた鍵で、穴にかちりと音を響かせると、真っ暗な室内にゆっくりと扉が開いていく。

 廊下にも角に明かりは灯されているはずなのに、開けられた奥に見えた空間は漆黒の闇だ。光の一切がない闇の中で、なぜかテディス公爵夫人だけがお茶を持って、こちらへと歩いてくる。

「テディス公爵夫人……?」