引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

「さて、私の夜這いには反応をしてくれるかな。徹底的に頑固だが」

「アレッシェラ様、夜這いだなんてそんな言い方……。第一、どうやって訪ねるのですか」

 たぶん、扉を開けられるつもりはありませんよと青くなっている。

「そうだな、私もそう思う」 

 頷き、近くにある別の部屋のドアを探してノブを回すと、幸い二つ隣は空き部屋で、鍵がかけられてはいないようだった。だから、そのまま部屋に入り、窓からベランダへと出る。

「それならば、こうするしかないだろう。幸い夜這いの作法にもかなっている」

 そう言うや否や、ベランダから身を乗り出し、とんと隣のベランダへと飛び移る。

「きゃあ! ア、アレッシェラ様……!」

 驚きすぎて、咄嗟に叫んでしまったルイサに軽く目配せをする。

「先に部屋に戻っていてくれ。私は、隣のレナール様の部屋にこのまま行くから」

 後ろでは、ルイサが真っ青になって止めようとしているが、かまわずに、さらに隣のベランダへと飛び移る。そして、真っ暗な部屋の前へと辿り着いた。

 ベランダの手すりに乗ったまま、窺ってみれば、中では、レナールが扉の前で立ち尽くしているではないか。その顔は、ひどく沈鬱だ。先ほどテディス公爵夫人によって紡がれていた、なまめかしい雰囲気はどこにもない。

 その姿を確認し、窓の横からアレッシェラはコンコンとガラスを叩いた。

「誰だ!?」