引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

「とりあえず、今のところは、こちらの心配の解消だけで十分だ」

 そう答えて見つめていると、テディス公爵夫人は引き寄せる腕から逃げられて焦ったのだろう。

「私はそんな話は気にしませんわ! 私がレナール様を気に入ったのですもの!」

「申し訳ありません。お言葉は嬉しいのですが、俺には応えることができないのです」

 そう言うと、そのまま身を離し、近くにあったドアの中へと入っていく。

「レナール様!」

 パタンと扉が閉まり、やがてがちゃりと鍵をかける音が響いた。

 しばらくテディス公爵夫人は、部屋の前でドンドンと扉を叩いていたが、やがて応答がないことに諦めたのだろう。

 扉から離れていく姿を見送り、アレッシェラは彫像の陰から動きだした。

「よし、どうやら一人きりになったようだな」

 まさかあの魅惑的な谷間にさえ、まったく関心を示さないとは――。嬉しいが、同時に心配にもなる。