―その日の夜。
街の明かりが少しずつ増えていく頃。
月華嬢のメンバーたちは、いつもの場所に集まっていた。
昼間とはまるで違う姿。
金色のウィッグ。
淡い水色のカラコン。
長いまつ毛。
そして、背中には大きく――
『月華嬢』
の文字。
その中心に立っているのは、もちろん麗愛だった。
「ねえ、凛空」
「んー?」
「今日さ、新しい少女漫画買ったんだけど!」
「また買ったの?」
「うん!」
麗愛は嬉しそうにカバンから漫画を取り出した。
「これ! 表紙からして絶対面白いやつ!」
「はいはい。どうせまたイケメンが出てきて騒ぐんでしょ」
「だって見てよ! この顔!」
「え、確かに顔はいい」
「でしょ!?」
二人で漫画を眺めていると――
「ねえ、それよりさ」
美月が突然、話に入ってきた。
「今日新しいリップ買ったんだけど、見る?」
「見る!!」
麗愛がすぐに反応する。
「どれどれ?」
「これ。新色なんだけど、めっちゃ可愛くない?」
美月がポーチからリップを取り出す。
「わあ……! ピンクベージュやん!」
「そう! れあ、こういう色好きそうだと思って」
「めっちゃ好き!」
「今度貸して〜!」
「いいよ。でもなくしたら怒るからね?」
「絶対なくさない!」
「ほんとに?」
「……たぶん」
「信用ないなあ(笑)」
みんなが笑う。
「そういえば、ひより最近ネイル変えた?」
「気づいた?」
ひよりが嬉しそうに手を見せる。
「昨日やったの。淡いピンクにしたんだ」
「かわいい!」
「麗愛も次これ系にしたら?」
「したい!」
麗愛は自分の爪を眺める。
「でも学校あるから、あんまり派手なのはできひんのよね」
「あー、それはそうか」
「じゃあ透明感あるピンクにしよ!」
「それいい!」
そんな話をしていると、今度はりあが口を開いた。
「……でさ」
「ん?」
「結局、昨日の彼氏から今日も連絡なかったんだけど」
「あ……」
空気が少しだけ変わる。
「また?」
「うん。まあ、いつものこと」
凛空は笑っている。
でも、麗愛にはその笑顔が少し無理しているように見えた。
「凛空……」
「大丈夫だって」
「ほんま?」
「ほんとほんと」
凛空は笑って、麗愛の頬を軽くつつく。
「それより、麗愛は?」
「え?」
「好きな人とかいないの?」
「い、いないよ!」
麗愛は即答した。
「ほんとに?」
「ほんと!」
「じゃあ、好きなタイプは?」
「えー……」
麗愛は少し考える。
「優しい人」
「普通(笑)」
「あと、ちゃんと大事にしてくれる人!」
「ほうほう」
「一緒にいて楽しい人がいい!」
「めっちゃ少女漫画のヒーローじゃん」
「だって理想やもん!」
「じゃあ顔は?」
「顔?」
「イケメンじゃなくてもいいの?」
「……できれば、かっこいいほうがいい」
「ほら!」
みんなが一斉に笑う。
「麗愛、結局顔じゃん!」
「違うもん!」
「絶対好きな人できたら顔から入るタイプだよ」
「そんなことないって!」
「じゃあ、芸能人で誰がタイプ?」
「えぇ……」
麗愛は真剣に考える。
「……いっぱいおる」
「ほら(笑)」
「だってかっこいい人はかっこいいやん!」
また笑い声が響く。
月華嬢は、今日も平和だった。
伝説と呼ばれているチームとは思えないほど。
コスメの話をして。
恋バナをして。
新しいネイルを見せ合って。
好きな服の話をして。
くだらないことで笑って。
そんな普通の女の子たちが集まっている。
麗愛は、この時間が大好きだった。
強くなりたいからここにいるんじゃない。
怖がられたいからでもない。
ただ――
この子たちと笑っていたい。
この場所を、ずっと守っていたい。
それだけだった。
━━━━━━━━━━━━━━
その頃――
少し離れた場所。
一台のバイクが静かに止まった。
黒月会のメンバーたちだった。
「昨日と同じ場所やな」
こうがが辺りを見渡す。
「……ああ」
蓮翔は、月華嬢の方を見る。
そして――
見つけた。
昨日の女の子。
金色の髪。
淡い水色の瞳。
仲間たちと笑っている。
「……いた」
「どれ?」
「……あの子」
蓮翔が視線を向ける。
こうがもそちらを見る。
「……ああ、昨日の子な」
「やっぱ可愛いな」
「昨日からそればっかやん」
「だって可愛いから」
蓮翔は、しばらくその姿を見つめていた。
昨日よりも、少しだけ知りたいと思った。
名前。
どんな子なのか。
何が好きなのか。
でも――
まだ話しかけるつもりはなかった。
ただ、もう一度会えたことが嬉しかった。
━━━━━━━━━━━━━━
「……?」
そのとき。
麗愛がふと顔を上げた。
何となく。
誰かに見られているような気がした。
「どうしたの?」
凛空が聞く。
「んーん」
麗愛は辺りを見回す。
「なんか、誰かいる気がした」
「月華嬢見に来た人じゃない?」
「そうかなあ」
麗愛は首を傾げる。
でも、すぐに笑った。
「まあいっか!」
「切り替え早(笑)」
「だって、せっかくみんなといるんやもん!」
「それもそうね」
また笑い声が響く。
月明かりの下。
少女たちは今日も笑っている。
その少し離れた場所には――
彼女に一目惚れした少年がいた。
けれど。
まだ二人は、お互いのことを何も知らない。
ただ同じ夜の中にいる。
それだけだった。
街の明かりが少しずつ増えていく頃。
月華嬢のメンバーたちは、いつもの場所に集まっていた。
昼間とはまるで違う姿。
金色のウィッグ。
淡い水色のカラコン。
長いまつ毛。
そして、背中には大きく――
『月華嬢』
の文字。
その中心に立っているのは、もちろん麗愛だった。
「ねえ、凛空」
「んー?」
「今日さ、新しい少女漫画買ったんだけど!」
「また買ったの?」
「うん!」
麗愛は嬉しそうにカバンから漫画を取り出した。
「これ! 表紙からして絶対面白いやつ!」
「はいはい。どうせまたイケメンが出てきて騒ぐんでしょ」
「だって見てよ! この顔!」
「え、確かに顔はいい」
「でしょ!?」
二人で漫画を眺めていると――
「ねえ、それよりさ」
美月が突然、話に入ってきた。
「今日新しいリップ買ったんだけど、見る?」
「見る!!」
麗愛がすぐに反応する。
「どれどれ?」
「これ。新色なんだけど、めっちゃ可愛くない?」
美月がポーチからリップを取り出す。
「わあ……! ピンクベージュやん!」
「そう! れあ、こういう色好きそうだと思って」
「めっちゃ好き!」
「今度貸して〜!」
「いいよ。でもなくしたら怒るからね?」
「絶対なくさない!」
「ほんとに?」
「……たぶん」
「信用ないなあ(笑)」
みんなが笑う。
「そういえば、ひより最近ネイル変えた?」
「気づいた?」
ひよりが嬉しそうに手を見せる。
「昨日やったの。淡いピンクにしたんだ」
「かわいい!」
「麗愛も次これ系にしたら?」
「したい!」
麗愛は自分の爪を眺める。
「でも学校あるから、あんまり派手なのはできひんのよね」
「あー、それはそうか」
「じゃあ透明感あるピンクにしよ!」
「それいい!」
そんな話をしていると、今度はりあが口を開いた。
「……でさ」
「ん?」
「結局、昨日の彼氏から今日も連絡なかったんだけど」
「あ……」
空気が少しだけ変わる。
「また?」
「うん。まあ、いつものこと」
凛空は笑っている。
でも、麗愛にはその笑顔が少し無理しているように見えた。
「凛空……」
「大丈夫だって」
「ほんま?」
「ほんとほんと」
凛空は笑って、麗愛の頬を軽くつつく。
「それより、麗愛は?」
「え?」
「好きな人とかいないの?」
「い、いないよ!」
麗愛は即答した。
「ほんとに?」
「ほんと!」
「じゃあ、好きなタイプは?」
「えー……」
麗愛は少し考える。
「優しい人」
「普通(笑)」
「あと、ちゃんと大事にしてくれる人!」
「ほうほう」
「一緒にいて楽しい人がいい!」
「めっちゃ少女漫画のヒーローじゃん」
「だって理想やもん!」
「じゃあ顔は?」
「顔?」
「イケメンじゃなくてもいいの?」
「……できれば、かっこいいほうがいい」
「ほら!」
みんなが一斉に笑う。
「麗愛、結局顔じゃん!」
「違うもん!」
「絶対好きな人できたら顔から入るタイプだよ」
「そんなことないって!」
「じゃあ、芸能人で誰がタイプ?」
「えぇ……」
麗愛は真剣に考える。
「……いっぱいおる」
「ほら(笑)」
「だってかっこいい人はかっこいいやん!」
また笑い声が響く。
月華嬢は、今日も平和だった。
伝説と呼ばれているチームとは思えないほど。
コスメの話をして。
恋バナをして。
新しいネイルを見せ合って。
好きな服の話をして。
くだらないことで笑って。
そんな普通の女の子たちが集まっている。
麗愛は、この時間が大好きだった。
強くなりたいからここにいるんじゃない。
怖がられたいからでもない。
ただ――
この子たちと笑っていたい。
この場所を、ずっと守っていたい。
それだけだった。
━━━━━━━━━━━━━━
その頃――
少し離れた場所。
一台のバイクが静かに止まった。
黒月会のメンバーたちだった。
「昨日と同じ場所やな」
こうがが辺りを見渡す。
「……ああ」
蓮翔は、月華嬢の方を見る。
そして――
見つけた。
昨日の女の子。
金色の髪。
淡い水色の瞳。
仲間たちと笑っている。
「……いた」
「どれ?」
「……あの子」
蓮翔が視線を向ける。
こうがもそちらを見る。
「……ああ、昨日の子な」
「やっぱ可愛いな」
「昨日からそればっかやん」
「だって可愛いから」
蓮翔は、しばらくその姿を見つめていた。
昨日よりも、少しだけ知りたいと思った。
名前。
どんな子なのか。
何が好きなのか。
でも――
まだ話しかけるつもりはなかった。
ただ、もう一度会えたことが嬉しかった。
━━━━━━━━━━━━━━
「……?」
そのとき。
麗愛がふと顔を上げた。
何となく。
誰かに見られているような気がした。
「どうしたの?」
凛空が聞く。
「んーん」
麗愛は辺りを見回す。
「なんか、誰かいる気がした」
「月華嬢見に来た人じゃない?」
「そうかなあ」
麗愛は首を傾げる。
でも、すぐに笑った。
「まあいっか!」
「切り替え早(笑)」
「だって、せっかくみんなといるんやもん!」
「それもそうね」
また笑い声が響く。
月明かりの下。
少女たちは今日も笑っている。
その少し離れた場所には――
彼女に一目惚れした少年がいた。
けれど。
まだ二人は、お互いのことを何も知らない。
ただ同じ夜の中にいる。
それだけだった。
