「彩羽ちゃん。」
花火の爆音に消されないよう、律が彩羽の耳元にそっと顔を近づけた。
「俺の世界を、モノクロからこんなに鮮やかにしてくれたのは、彩羽ちゃんだよ。彩羽ちゃんがいてくれたから、俺は自分の写真も、自分自身のことも好きになれた。」
打ち上がる光の中で、律の瞳は世界中の何よりもまっすぐに彩羽だけを映している。
「…ねえ、一回だけでいいから。『律』って呼んでみて?」
またしても子供のようにねだってくる律に、彩羽は困ったように眉を下げたが、夜空を彩る大景と大歓声のどさくさに紛れて、意を決して小さく口を開いた。
「……り、りつ……先輩……っ」
蚊の泣くような小さな呟きだったけれど、律の耳には確かに届いた。


