「じゃあさ、部室じゃなくてもいいから……二人だけの時は、白石も俺のこと『律』って呼んでよ。」
「えっ……!?」
「『黒羽先輩』って呼ばれると、なんか壁があるみたいで寂しいんだ。二人きりの時は、名前で呼んで? ね、お願い。」
おねだりするように、長い睫毛の奥にある綺麗な瞳で覗き込んでくる律。
至近距離で放たれるあまりの顔面の破壊力に、彩羽は混乱し、激しく狼狽した。
「む、無理です…! 先輩は先輩ですし、そんな…馴々しく呼べません……!」
「馴々しくないよ。俺たち付き合ってるんだし、俺は彩羽ちゃんの彼氏なんだからさ。」
「む、無理なものは無理です……っ!」
頑なに顔を伏せて拒絶する彩羽に、律は
「ちぇー、焦らし上手だなあ。」
と困ったように苦笑した。
けれど、繋いだ手にはいっそう愛おしさを込めて力を込め、どこまでも甘く深く、熱を帯びた瞳で彩羽のことを見つめ続けるのだった。


