「黒羽……先輩……。」
律は壊れものを扱うように、けれど絶対に離さないという強い力で彩羽を抱きしめた。
彼の身に纏うコロンの香りと、早鐘のように打つ心臓の鼓動がダイレクトに彩羽へと伝わってくる。
「俺が頼りないせいで……守ってあげられなくてごめん。周りの雑音なんて、俺が全部消してみせる。だから……俺を捨てないでくれ…。頼むから…。」
泥臭く、余裕もプライドもなくし、ただただ自分を求めて縋りついてくる律の熱。
そのなりふり構わない温もりに触れた瞬間、彩羽の胸に渦巻いていた不安の毒は、すっと霧が晴れるように消えてなくなった。
(噂や過去の黒羽先輩じゃない……。こんなにも格好悪く私を必死に愛してくれている『今の黒羽先輩』を、信じたい。)
「……ごめんなさい、黒羽先輩。もう二度と…離れるなんて言いません。」


