「……え?」
''離れる''という言葉が耳に届いた瞬間、律の顔からいつも浮かべていた余裕のある笑みが完全に消え去った。
セーフランプの赤い光の中で、彼の整った輪郭が緊張で引きつる。
「……本気で言ってるの? 白石。」
低く落ちた律の声には、今まで聞いたこともないような冷たい焦燥が混ざっていた。
彩羽が恐怖で肩を揺らしたその時、暗室のドアが少し開き、息を切らした美術部の友人が飛び込んできた。
「黒羽! 大変なんだって! 白石さんの靴箱にまた酷い紙が入ってて…。あ、白石さん、ごめん!」
唯一、彩羽との交際を伝えていた友人の言葉に、律の瞳が大きく見開かれる。
彩羽が隠そうとしていた傷、一人で耐えていた嫌がらせ、そして「元・遊び人」という自分自身の愚かな過去の影が、どれほど彩羽を追い詰め、傷つけていたのかを、律はすべて理解した。
「……ちょっと外に出ててくれ。」


