「ごめん。気持ちは嬉しいけど、付き合えない。」
律の声は、驚くほどはっきりとしていた。相手の目をまっすぐに見つめ、一切の揺らぎがない誠実な拒絶。
「私じゃ……ダメですか? 先輩、今は彼女さんいないって聞きました……!」
「彼女はいないよ。でも……俺には、ずっと好きな人がいるんだ。」
律の迷いのない言葉に、後輩女子の瞳から涙がこぼれ落ちる。
「その人以外と付き合う気はないし、その人への気持ちをごまかすために誰かと付き合うのも、もう絶対にやめたんだ。本当にごめん。」
後輩女子が何度も頭を下げて走り去った後も、律はしばらくその場に立ち、一人静かに初夏の空を見上げていた。
物陰で見ていた彩羽は、膝の震えを止めることができなかった。
口先だけではなかった。
彼は本当に変わったのだ。
誰よりも彩羽に向き合うために、過去の自分を捨て、甘い逃げ道を完全に断ち切っていた。


