GWが明けた5月の放課後。
彩羽は現像薬品を補充するため、静まり返った準備室へと向かっていた。
特別校舎の裏手、初夏を感じさせる濃い木陰の近くを通りかかったとき、風に乗って小さな話し声が聞こえてきた。
「……あの、黒羽先輩! ずっと好きでした! 私と付き合ってください!」
ハッとして足を止める。
木の影からそっと覗くと、そこには真っ赤な顔をした1年生の女子生徒と、困ったように佇む律の姿があった。
彩羽の胸がぎゅっと冷たく縮こまる。
(黒羽先輩だから……。また適当に微笑んで、付き合ってしまうんだろうな。)
噂通りの遊び人だった頃の律なら、傷つけないフリをして相手の気持ちを受け止め、流されていたはずだ。
やっぱり、人はそう簡単には変われないのかもしれない────
胸の奥で諦めかけた、その時だった。


