「白石。……俺と付き合ってほしい。」
旧校舎の渡り廊下。
斜陽が格子窓を朱色に染め上げる中、律の言葉が廊下の静寂を震わせた。
夕陽を背にした律の瞳は、かつての軽薄さや余裕ぶった気まぐれなど微塵も感じさせないほど、どこまでも真っ直ぐで、切実な熱を帯びていた。
彩羽の鼓膜が強く跳ね上がる。
胸の奥が締め付けられるように痛かった。
ずっと憧れ、自分の気持ちを胸の奥に閉じ込めてきた人からの、紛れもない本気の言葉。
けれど────。
次の瞬間、彩羽の胸の奥で鋭い警報音が鳴り響いた。
脳裏をよぎるのは、かつて律の周りにいた美しい女子生徒たちの姿。
姫華先輩のこと、冬に傷ついて去っていった美咲さんのこと。
そして校内で噂されていた
「学校一の遊び人」
としての彼の過去。


