「美咲と別れてから、ずっと考えてた。俺がどれだけ愚かで、ダサい逃げ方をしてたか。……お前に『関係ありません』って言われた時、死ぬほど痛かった。でも当然だよな。俺が勝手に怖がって、お前を傷つけたんだから。」
律の声には、かつての余裕ぶった軽さは欠片も存在しなかった。
そこにあったのは、飾りのない、剥き出しの真実だけだった。
「俺が遊び人だって思われてもいい。嫌われても、拒絶されても自業自得だと思ってる。……でも俺はもう、お前から目を逸らさない。お前が切り取る世界も、お前自身も、俺のファインダーから逃がさないから。」
夕陽の赤い光の中で、律が魅せた表情。
それは
「学校一のイケメンとしての作られた笑顔」
などではなく、切なさと本気の熱を帯びた、不器用で真っ直ぐな一人の男の素顔だった。
「……っ」
彩羽の胸の奥で、固く閉ざされていた防波堤に、激しい波が打ち寄せる。
一歩引いていたはずの足が、熱を帯びたように震えて動かない。
ファインダーというガラス越しではない。
目の前にいる律のまっすぐな''本気''が、静かに、けれど確実に彩羽の心を揺さぶり始めていた。


