色彩のない世界。
白と黒、そして幾重にも重なる灰色のグラデーションしかないはずなのに。
そこからは、息をのむほど温かく、そして儚い命の脈動が確かに感じられた。
律はその写真の前に立ち、ポケットに手を突っ込んだまま、長い間微動だにできずにいた。
「黒羽。」
いつの間にか隣に立っていた工藤先生が、壁の写真を見つめたまま、静かに声をかけてきた。
「白石さんの写真は、世界への深い慈愛に満ちている。……翻って、お前の写真はどこまでも綺麗だが、どこか空虚だ。お前自身が、自分の本当の心から逃げているからじゃないのか?」
「……」
ぐうの音も出なかった。


