「一緒にいてもさ。律くんの目、いっつも写真部の白石さんの方ばっかり追ってるの、気づいてないとでも思ってた? ……嘘つき。バイバイ。」
引き留めるための甘い言葉も、いつもの器用な言い訳も、何ひとつ口から出てこなかった。
泥を跳ね上げながら遠ざかっていく美咲の背中を、律はただ無言で見送り続けた。
手に持った傘からポタリと落ちる雨滴。
律は冷たい校舎のコンクリート壁に後頭部を打ちつけ、そのままゆっくりと天を仰いだ。
愚かだったのは、自分だ。
彩羽への狂おしいほどの執着と、彼女の写真に自分の心を根こそぎ奪われたという現実を認めるのが怖くて。
己のちっぽけなプライドを守るために、別の女子で気を紛らわせようとした。


