「……何か、ご用ですか?」
必死に声を張る彩羽。
律は彩羽のすぐ目前で足を止め、見下ろすように視線を落とした。
吐息が届きそうなほどの距離。
律が纏う甘いコロンの香りと、冷たい雨の匂いが混ざり合って鼻腔を突く。
「白石。……俺が誰と付き合っても、本当にどうでもいいんだ?」
「え……?」
「姫華と別れたときも、美咲と付き合ったときも。お前、いっつも『私には関係ありません』って顔してさ。……冷たすぎるんじゃない?」
律の瞳には、かつて見せたことのない激しい苛立ちと、今にも崩れ落ちそうな焦色の熱が揺れていた。
新しい彼女を作っても、彩羽の存在が頭から離れるどころか、日に日に狂おしく膨らんでいくばかりだったのだ。
彩羽は唇を強く噛み締め、震える両手を強く握りしめた。
「……関係ありません。」
「白石────。」
「黒羽先輩が誰と付き合おうと、私には関係ありません! 先輩は……私にとって『写真部の先輩』です。それ以上でも、それ以下でもありません!」


