11月。
冷たい秋雨が校舎の窓ガラスを激しく叩く放課後。
彩羽は一人、部室の奥にある暗室にこもっていた。
パチッと灯る赤いセーフランプだけが、狭い空間をぼんやりと照らし出す。
現像液のツンとした刺激臭が充満する中、印画紙を液に浸し、静かに像が浮き上がってくるのを待っていた。
ガチャッ。
重い扉の鍵が開く音が響き、彩羽は跳ね上がるように振り返った。
そこに立っていたのは、雨に濡れた前髪を雑に払う、律の姿だった。
セーフランプの赤い光に照らされた彼の鋭い輪郭が、暗闇の中に怪しく浮かび上がる。
「あ……黒羽先輩。今、現像中ですので、光が入ると───。」
「ドアは閉めたよ。」
律は低い、押し殺したような声で遮ると、狭い暗室の奥へと足を進めてきた。
彩羽は思わず後退りするが、背中は現像バットの置かれた作業台に当たってしまう。
逃げ場がない。


