「え…? 黒羽先輩、また新しい彼女できたの?」
10月下旬。
廊下で交わされる律と同じ学年の女子生徒たちの囁き声に、彩羽の足がぴたりと止まった。
「うん、4組の美咲ちゃんだって! 姫華ちゃんと別れてまだ1週間も経ってないのに、相変わらず手早いよね〜。」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がヒヤリと冷たく冷え切っていくのを感じた。
姫華と別れたと聞いたとき、どこかで
「もしかして自分のせいなのではないか。」
と身を縮めて怯えていた彩羽。
けれど、現実は違っていた。
律はただ、噂通りの''遊び人''で、誰とでも簡単に付き合い、簡単に別れていく人だったのだ。
(そうよね。あの人は、そういう人だ…。)
けれど、律自身もまた、自分の愚かさと醜さに苦しんでいた。
姫華に振られ、彩羽へのこの感情が単なる好奇心ではなく''恋''だと認めざるを得なくなった瞬間、律の肥大化したプライドがそれを激しく拒絶したのだ。
今まで誰にも本気にならず、常に優位に立ってきた自分が。


