姫華は切なさの混じった笑顔を浮かべ、逃げようとする律の目をまっすぐに見つめた。
「律くんの心、最初からここになかったでしょ。白石さんの写真を見てるとき…白石さんのこと探してるとき…律くん、見たことない顔してるよ。」
「それは……。彼女の撮る写真が、ただ面白いからで────。」
「嘘ヘタだね。」
姫華の静かな一言に、律の口から言い訳の言葉が消えた。
二人の間に、風の音だけが吹き抜ける。
「私じゃ、律くんの仮面、外してあげられなかった。…バイバイ、律くん。本気になれない恋なんて、もう要らない。」
姫華はきっぱりと言い放つと、溢れそうになる涙を指でぬぐい、一度も振り返ることなく校舎の影へと走り去っていった。
夕空の下、一人取り残された律は、静かに天を仰いだ。
振られたショックよりも先に胸を突いたのは、自分自身の''空虚さ''と、彩羽という存在に対する''狂おしい執着''を突きつけられたことへの、背筋が凍るような恐ろしさだった。


