その黒い瞳には、周囲の笑い声や喧騒すら届いていない。
そこにあったのは、狂おしいほどの真剣さと、熱を帯びた圧倒的な執着だった。
その律の姿を、少し離れた人混みの中から姫華が見つめていた。
(……あんな目、私には一度も見せてくれたことないよ。)
文化祭が終わり、片付けの放課後。
オレンジ色の夕空が広がる特別校舎の裏手へ、姫華は律を呼び出した。
「どうしたの、姫華?」
律はいつもの甘く優しい笑顔を浮かべて見せる。
けれど、その完璧な笑顔が、今の姫華には何より冷たく、遠いものに感じられた。
「律くん。…私と付き合ってて、楽しかった?」
「え? なに急に…。」
「ううん、ずっと分かってたの。」


