10月上旬。
文化祭の熱気と喧騒に包まれた校内の一角。
写真部の展示室は、押し寄せる生徒たちで大盛況を見せていた。
壁一面に並べられた彩り豊かな作品群の中で、ひときわ多くの生徒が足を止め、言葉を失っていた場所がある。
彩羽の撮った、
『放課後の誰もいない教室』
という一枚の写真だった。
古びた木製の机に、斜めに落ちる夕陽の影。
誰も気に留めないような日常のひとコマ。
けれどそこには、息をのむほど切なく、胸を打つような静寂が収められていた。
その写真の真ん前に、律が立っていた。
ポケットに手を突っ込み、吸い寄せられるように彩羽の作品を見つめ続ける律。


