「ごめん、ちょっとあっちの光の入り方、見てくる。」
そう言い捨てると、律は姫華の
「えっ、律くん!?」
という呼び止める声を背に、一度も振り返ることなく岩場へと足を進めた。
「白石。」
静かに声をかけると、彩羽は驚いたように肩を大きく揺らし、抱え込むようにカメラを守りながら振り返った。
「あ……黒羽先輩。…姫華先輩は?」
「向こうにいる。…それより、何撮ってたの?」
彩羽は一瞬迷うような素振りを見せたが、やがて躊躇いがちに小さな液晶画面を律へと向けた。
そこに写っていたのは、派手な大海原でも、眩しい青空でもなかった。
引き波が砂浜に残していった小さな気泡と、そこに気まぐれに反射する夕陽の細かな破片。
「……すごく静かで、綺麗な海だな。」
律の口から漏れたのは、一切の計算もない本音だった。
同時に、胸の奥がぎゅっと締め付けられるような激しい痛みに襲われる。


