7月下旬。
コンクールに向けた夏合宿の舞台は、果てしない青い海と潮風が包む静かな港町だった。
ジリジリと照りつける太陽のもと、波打ち際では2年生たちが歓声を上げながら、お互いにカメラを向け合っている。
白く弾ける波飛沫。
その中心にいる律のすぐ隣には、お揃いの麦わら帽子を被った彼女の姫華が、眩しい笑顔で寄り添っていた。
「律くん、こっち向いて! はーい、笑顔!」
スマートフォンに向けられる、いつもの完璧な角度と、隙のない甘い笑顔。
カシャッ。
シャッター音が響いたその直後、律の視線は吸い寄せられるように、皆の輪から大きく離れた場所へと向かっていた。


