その時、ガラッと静寂を破って部室のドアが開いた。
「あれ、律くんまだいたんだ? 傘忘れちゃってさ〜。あ、一緒に帰ろ!」
入ってきたのは、ビニール傘を抱えた姫華だった。
部室に満ちていた重い空気が、一瞬で弾けて霧散する。
「あ……うん、そうだね。」
律は弾かれたように立ち上がると、瞬時に''いつもの完璧な笑顔''を顔に貼り直した。
けれど、その動きはどこかぎこちなく、目は泳ぎ、ちらちらと彩羽の様子を伺ってしまう。
彩羽は何も言わず、静かにカメラを革のバッグへと収めた。
チャックを閉める小さな音が、やけに重く響く。
バッグを肩にかけ、彩羽は深く深く頭を下げた。
「黒羽先輩、姫華先輩、お先に失礼します。」
引き留めようとするかのように、律の手がかすかに動いた。


