ぽつり、と落ちた言葉。
雨音に紛れてしまいそうなほど小さな声だった。
その瞬間、律の顔から一切の感情が抜け落ちた。
引き結ばれた唇。
固まった眉。
彼女である姫華すら気づかない。
誰もが見ようともせず、ただ''かっこいい黒羽律''として消費し続けてきた完璧な仮面。
それを、出会ったばかりの小さな後輩に、ファインダーという小さなガラス越しにあっさりと剥がされたのだ。
「…白石さんって、変なこと言うんだね。」
律の口から漏れたのは、低く、低い呟きだった。
そこにいたのは、甘い言葉を囁く先輩ではなく、誰の立ち入りも許さない冷ややかな瞳をした、一人の男だった。


