4月上旬。
満開の桜が舞い散る大学のキャンパス。
真新しいスーツに身を包んだ二人は、恋人繋ぎで、桜並木を歩いていた。
週末、二人はかつて二人で初めて出かけた思い出の海岸へと足を運んだ。
春のやわらかな潮風が心地よく吹き抜け、澄み渡る青い海が陽光を浴びてキラキラと輝いている。
首から大事な一眼レフカメラを下げた彩羽は、ファインダーを覗き込みながら弾んだ声で言った。
「律くん、こっち向いて!」
カシャッ、と軽いシャッター音が響く。
ファインダーの向こうで、律は世界で一番愛おしそうな優しい笑顔を浮かべ、彩羽の元へ歩み寄ると彼女を引き寄せて額をこつんと小突いた。
「今度は俺の番。彩羽ちゃん、笑って!」
「あ、ズルいです!」


