不意に紡がれたその呼び名に、彩羽を力強く抱きしめていた律の身体が、ピクッと固まった。
「……っえ?」
「……あ。」
ハッと我に返った彩羽は、自分の口から出た言葉に瞬時に顔を真っ赤にした。
春から同じ大学に通うのだと心の中で思っていたことが、胸がいっぱいになった勢いでうっかり口から滑り出てしまったのだ。
「あ、あのっ……ごめんなさい! これからは同じ大学だし、その…心の中で練習してたら、不意に口が出ちゃって…っ。」
慌てて弁解しながら、彩羽がおずおずと上目遣いで「……嫌だった……? 律くん…。」
と尋ねると、律は一瞬呆然とした後、ブワッと耳まで真っ赤にして両手で顔を覆った。
「…っ、反則……! なんでそんな不意打ちしてくんの……心臓止まるかと思った…ッ。」
普段はどんな時も余裕たっぷりで彩羽を翻弄していた律が、見たこともないほど慌てて照れまくっている。
そのギャップと可愛らしさがたまらなくて、彩羽は恥ずかしさを忘れてくすっと愛らしく笑った。
「ふふ、でも……律くんって呼びたかったんです。大好きです、律くん!」
「……もう、調子乗らないで……っ!」
照れの限界を迎えた律は、そのまま彩羽の腰を力強く引き寄せると、言葉を遮るように深くて甘いキスで彼女の唇を塞いだ。
赤く灯る暗室の隅で、二人は一生解けることのない愛の誓いを深く交わしたのだった。


