monochrome 〜君の切り取る世界に、恋をした〜


​3月上旬。

やわらかな春の陽光が窓から静かに差し込む放課後の写真部の部室。

校庭からは運動部の声や笛の音がかすかに響くなか、彩羽は部長として残された最後の仕事を一つひとつ確かめるように進めていた。

​使い込まれた木製の長机の上には、細かく整理された備品管理帳と、使い込まれて少し角が丸くなった部室の鍵。

それを取り囲むように立っている後輩たちの瞳は、いまにも溢れ出しそうな涙で潤んでいた。


​「白石先輩、今まで本当に…本当にありがとうございました…! 先輩が作ってくれたこの温かくて居心地のいい写真部が、部員みんな、大好きでした」

​「ううん、私一人じゃ何もできなかったよ。みんなが信じてついてきてくれたおかげ。これからは新しい部長を中心に、みんなのペースで、自分だけの''色''を写真で楽しんでね。」


​涙ぐむ後輩たちに一人ずつ優しく目を合わせ、部室の鍵をそっと手渡す。

すると、隣に立っていた副部長が照れくさそうに、けれど誇らしげに、一冊の思いのほか分厚い革表紙のアルバムを差し出してきた。