10月下旬。
全国高校写真コンテストでの最高賞受賞の熱狂と余韻が少しずつ落ち着きを見せ始めた頃、彩羽は放課後、顧問の工藤先生に呼び出されて静かな進路指導室へと向かっていた。
「白石、まあそこに座れ。」
そう言って朗らかな笑みを浮かべた工藤先生は、スチールデスクの上に一通の重みのある厚い書類を置いた。
「お前が全国金賞を取っただろ? その圧倒的な実績を受けて、あの黒羽の通っている芸術大学から、今年度の『特別指定校推薦枠』がうちの高校に正式に届いたんだ。」
「え……!? 特別…指定校推薦……!?」
「そうだ。お前が放課後誰もいなくなった暗室に籠もり、愚直に積み重ねてきた努力も、コンテストで残した最高の結果も、大学側の教授陣にちゃんと届いたんだよ。形式上の面接と作品提出はあるが、事実上の合格内定だ。本当におめでとう、白石。」
予想もしていなかった最高の吉報に、彩羽の胸の奥が熱くこみ上げるもので満たされていく。
大好きな律と同じ大学へ行きたい、彼の背中を追いかけたい────
その強い願いが、誰かにお膳立てされたものではなく、自分自身のレンズと写真の実力で掴み取った確かな道として、いま目の前にまっすぐに拓けたのだ。
指先を震わせながら書類を見つめる彩羽の瞳から、嬉し涙が小さく零れ落ちた。


