4月中旬。 春風が校庭に残る桜の花びらを優しく揺らす頃、彩羽は高校生活最後の年を迎え、写真部部長として下級生を引っ張る忙しい日々を送っていた。 一方、律は無事に合格を果たした隣県の芸術大学へと進学し、一人暮らしを開始していた。 地元の街から律が暮らすアパートのある街までは、高速道路を使っても片道約2時間。 「片道2時間なんて、俺からすれば目と鼻の先だから。」 卒業前にそう言って爽やかに笑っていた律の言葉は、決して強がりでも何でもなかった。