3月上旬。
春の柔らかな光が差し込む体育館で、卒業式が執り行われた。
胸にコサージュをつけた律と姫華たち3年生が、保護者や後輩たちの拍手に送られて校舎を後にする。
式が終わり、静まり返った部室。
二人きりになった室内で、律はブレザーの第二ボタンを外し、彩羽の手のひらにそっと乗せた。
「これ、彩羽ちゃんにあげる。」
「律さん……。」
「無事に美大も合格したし、俺の高校生活は、彩羽ちゃんに出会えたことで完璧になったよ。」
律は真っ直ぐな瞳で彩羽を見つめ、寂しさに目元を濡らす彩羽の涙を優しく指で拭った。
「離れ離れになるの、寂しい?」
「……すごく、寂しいです。」
「大丈夫。俺たちの距離は、彩羽ちゃんが思ってるよりずっと近いから。…春休み、楽しみにしててね。」
まだ意味の分からない言葉を残し、律は最高の笑顔を咲かせて卒業していった。


