律のマウスを動かす手が止まった。
暗室の赤い光の中で、律は静かにパソコンの画面を閉じ、彩羽の方へと向き直った。
「記録係として全校生徒を撮りながらさ……。気づいたら、俺のレンズは勝手に彩羽ちゃんを追ってたんだ。」
律の低い声が、静かな暗室に響く。
「逃げるためにカメラを持ってた俺に、本当の写真の美しさを教えてくれたのは彩羽ちゃんだ。…美咲と別れて、自分の愚かさに気づいてから、ずっと誓ってた。もう二度と自分に嘘はつかないって。」
律はそっと手を伸ばし、彩羽の膝の上で固く握られていた小さな手を、自分の大きな手で包み込んだ。
「俺のファインダーには…最初からずっと、彩羽ちゃんしか映ってなかった。記録じゃなくて、俺の人生の全部を使って、彩羽ちゃんだけを映し続けたいんだ。」


