ガシッ、と力強い腕が彩羽の腰を後ろから包み込んだ。
背中にダイレクトに伝わる、男らしく厚い胸板の熱。
鼻腔をくすぐる、律の甘く香ばしいコロンと爽やかな汗の匂い。
すっぽりと自分の身体が律の腕の中に収まっているのだと理解した瞬間、彩羽の全身の血が逆流したように熱くなった。
「……危ないって。カメラも、彩羽ちゃんも。」
耳元で、律の低い声と温かい吐息が漏れる。
律は抱きとめた腕をすぐには解かず、背後から包み込むような姿勢のまま、彩羽の耳元で静かに呼吸を整えていた。
「黒羽、先輩……あの、すみません…。」
「怪我なくてよかった。…でも、もう少し俺のこと頼ってよ。俺、いつでも彩羽ちゃんを受け止める準備できてるんだからさ。」
律の手が、彩羽の腰から滑るように離れる。
振り向くと、夕陽の赤に染まった律が、切なさと愛おしさを混ざり合わせたような、息をのむほど美しい表情で彩羽を見つめていた。


