10月。
夏の暑さを忘れかけた夕暮れ時、校舎は翌日に迫った文化祭の準備に追われる生徒たちの熱気とざわめきに包まれていた。
「白石、旧校舎の3階と渡り廊下の装飾、記録撮影残ってるだろ? 俺も手伝うよ。」
黄昏時の光が差し込む部室で、律が首から一眼レフを下げながら声をかけてきた。
「ありがとうございます、黒羽先輩。じゃあ、渡り廊下からお願いします。」
二人は静まり返り始めた旧校舎の渡り廊下へと向かった。
茜色の斜光が格子窓から差し込み、床の上に長い影を落としている。
各クラスが趣向を凝らして吊り下げた紙細工や看板を、彩羽は記録用カメラで丁寧に切り取っていった。
「これ、高い位置にあるから少し撮りにくいな……。」
彩羽は渡り廊下の端にあるアーチ状の装飾を下から見上げ、背伸びをしてカメラを構えた。
つま先立ちになり、ファインダーを覗き込みながら角度を調整する。
その時、足が微かにふらつき、彩羽は体制を崩した。
「あっ……!?」
バランスを失い、後ろへと倒れかけそうになった瞬間────。


