彩羽は意を決するように顔を上げ、涙で潤んだ瞳で律を見つめた。
「来年から…律さんは大学生になって、私は高校の3年生になって…。今みたいに、すぐには会えなくなっちゃうよね。」
「……。」
「私、寂しいよ…。律さんが私の知らない遠くの世界へ行っちゃう気がして、すごく…怖いよ…っ。」
ぽつりと零れ落ちた、胸の奥の本音。
受験に合格すれば、律は高校という小さな枠組みを飛び出し、自分の知らない広く自由な世界へ羽ばたいていく。
立場が変わり、周囲の環境が変わり、物理的な距離が離れてしまうことへの圧倒的な不安と恐怖が、楽しかったデートの裏でずっと彩羽の胸を締め付けていたのだ。
律は少しだけ目を見開いた後、焦ったように彩羽の肩を強く抱き寄せ、そのまま深く胸の中に引き込んだ。
「バカだな……。泣かないでよ、彩羽ちゃん。」
優しく背中をさすってくれる律の声も、わずかに震えていた。


