文化祭を目前に控えた、10月最初の日曜日。
推薦入試の資料集めと文化祭前の息抜きを兼ねて、ふたりは少し遠出して電車を乗り継ぎ、秋風が香る古い港町へとやってきていた。
澄んだ秋の冷たい海風が吹き抜ける中、お揃いのカーディガンを羽織ったふたりは、ぴったりと肩を寄せて海岸線の遊歩道を歩いていた。
「うわ、すごい…! 空気が澄んでるから、海の青がすごく深い…!」
彩羽が首から下げた一眼レフを構え、輝く波間に夢中でシャッターを切る。
その隣で律は、ファインダー越しに世界を見つめる彩羽の横顔を、愛おしそうに自身のレンズで覗き込んでいた。
「彩羽ちゃん、こっち向いて。」
「え?」
振り返った瞬間、カシャリと軽い音が響き、レンズの向こうで律が優しく目を細めた。
名物の美味しい海鮮丼を食べて、レトロな喫茶店で温かいホットドリンクを飲んで他愛のないことで笑い合って────
どこを切り取っても、絵本のように幸福な時間。


