「ねえ、彩羽ちゃん。」
「ん……?」
「俺さ、本気で美大に行くことに決めたから。」
律のまっすぐな言葉に、彩羽はハッと息をのんで彼を見上げた。
美術大学。
それは、写真や芸術を本格的に極めるための、遠くて眩しいプロへの世界だ。
「…写真の技術も、光の捉え方も、表現の仕方も、もっともっと勉強したいんだ。…それに、何より、」
律は真剣で真っ直ぐな瞳で彩羽の目を捉えた。
「俺に『世界には色がある』って教えてくれたこのカメラと写真で、これからもずっと生きていきたい。……彩羽ちゃんが切り取るあの光に満ちた世界に負けないくらい、もっとすげえ写真を撮れるようになりたいんだよ。」
自分の存在や写真が、律の将来の夢を動かす大きなきっかけになったこと。
そして彼が誰の真似でもない自分の足で、しっかりと未来へ歩き出そうとしていること。
胸の奥が熱くなり、彩羽は込み上げる嬉しさと誇らしさで胸がいっぱいになった。
「……うん。私、律さんの写真、ずっとずっと楽しみにしてるから。」
律は愛おしさに耐えかねたように彩羽を力強く抱きしめ、耳元で優しく囁いた。
「ありがとう。…離れても、俺のファインダーが捉える中心は、いつだって彩羽ちゃんだから。」


