グキッ。
鈍い音と、激痛が走る。
彩羽は悲鳴を噛み殺しながらその場に倒れ込んだ。
咄嗟にかばった首から下げたカメラは無事だったが、右足首に強い激痛が走り、立ち上がることができない。
周囲の喧騒と歓声の中、泥にまみれて倒れ込む彩羽の存在に気づく者は誰もいなかった。
(どうしよう…早く移動しないと、リレーの邪魔に…。)
焦りと痛みで視界が涙で滲んだ、その時だった。
「白石────っ!?」
遠くの招集エリアから、狂おしいほどの叫び声が響いた。
出走直前、ゼッケンを胸につけた律が、周囲の制止の声を振り切ってトラックを斜めに横切り、一直線に駆け抜けてきたのだ。
「黒羽!? どこ行くんだ、もうすぐ本番だぞ!」
役員の教員の声を完全に無視し、律は彩羽の前に膝をついた。
その顔は蒼白で、瞳は激しい揺れを見せている。


