「明日さ。俺、アンカーで走るから。」
「……はい、知っています。」
「全校生徒の膨大な記録の中にさ……俺の必死でダサい顔も、ちゃんと残しておいてね。」
律は隣を向き、夕陽の光を瞳に宿しながら、静かに彩羽を見つめた。
そこには、以前のような作り物の余裕など欠片もなかった。
「彩羽ちゃんだけの『特別な一枚』じゃなくていい。彩羽ちゃんが記録係として、レンズ越しに俺を見ていてくれるだけで…俺は誰よりも速く走れる気がするんだ。」
真摯で、熱を帯びた言葉。
彩羽は言葉を失い、ぎゅっと胸元の腕章を握りしめた。
心の奥に打ち立てていた頑丈な防波堤が、夕陽の熱に溶かされるように、静かに、けれど確実に揺らぎ始めていた。


