彩羽はファインダー越しにその姿を見つめた後、カメラを静かに首から外し、近くの自動販売機へと歩いて行った。
「……律先輩。お疲れ様です。」
トラックの脇で膝に手をつき、肩を上下させていた律の前に、缶コーヒーが差し出された。
律はハッと顔を上げ、驚いたように目を見開いた後、心底愛おしそうな緩んだ笑みを浮かべた。
「彩羽ちゃん……。ありがと、冷たくて気持ちいい。」
律は缶コーヒーを受け取ると、冷たい缶を己の首筋に当てて短く息を吐き、そのままトラック脇のベンチに腰を下ろした。
ポンポン、と自分の隣のスペースを叩く。
彩羽は一瞬躊躇ったが、少しだけ間を空けて静かに腰を下ろした。
二人の前に、茜色に染まる広いグラウンドが広がっている。
風が吹くたび、土の匂いと夏の始まりの匂いが吹き抜けていく。
「明日の記録撮影、大変でしょ。全校生徒撮らなきゃいけないんだろ?」
「はい。でも、写真部の重要な仕事ですから。」
「ふーん……。」
律は缶コーヒーのプルタブを静かに開けると、一口含んで遠くの夕空を仰いだ。


