体育祭前日。
放課後のグランドには、オレンジ色の夕焼けがどこまでも低く垂れ込めていた。
本部テントの設置、入退場門の組み立て、トラックの白いライン引き。
準備作業に追われる生徒たちの姿を、彩羽は記録用カメラで一つひとつ丁寧に収めていった。
作業がほとんど終わり、生徒たちがパラパラと下校し始めた頃、静まり返ったトラックの片隅で、一人何度もスタートダッシュを繰り返す影があった。
律だった。
スターティングブロックに足をかけ、静寂の中に踏み出す。
鋭いダッシュから数十メートルを走り抜け、息を切らして立ち止まる。
それを何度も、何度も繰り返している。
周囲からの強い期待と、最上級生としての重圧をその背中に一瞬だけ覗かせていた。


