律は悪戯っぽく微笑むと、首を少し傾げて彩羽の目の前まで顔を近づけてきた。
吐き出される息が熱く、汗と爽やかなコロンの香りが潮風のように漂う。
「……はい。ピントもブレずに、しっかり撮影できています。」
「そっか。……白石に撮ってもらえてると思うと、なんかいつもより力入っちゃうな。」
律はそう静かに囁くと、周囲の視線を気にする素振りすら見せず、彩羽の頭をぽん、と優しく叩いてトラックへと戻っていった。
残された彩羽は、熱を持った頭頂部と、ファインダー越しに見た律の真っ直ぐな瞳の残像に、立ちすくむことしかできなかった。


