次の瞬間、トラックの第4コーナーを回った律が、ふっとスピードを落とす。
そして、カメラを構える彩羽の方へと真っ直ぐに視線を向けた。
ファインダー越しに、瞳と瞳が一直線に衝突する。
大勢の生徒が群がるグランドの真ん中で、まるで世界に二人しかいないかのような錯覚。
律の黒い瞳が、逃げようとする彩羽のレンズを射抜き、捉えて離さない。
彩羽の心臓が、跳ね上がったようにドクンと大きく鳴った。
「ふぅ……白石。」
練習を終えた律が、呼吸を乱しながら、一直線に彩羽のもとへと歩み寄ってきた。
汗で濡れた黒髪が額にへばりつき、首筋を滑る汗の滴が日差しを受けてキラリと光る。
周囲の女子生徒たちが一斉に二人を注視するのが分かり、彩羽は思わず後退りしそうになった。
「あ……黒羽先輩。お疲れ様です。」
「記録係さん。俺の今の走り、ちゃんと綺麗に残せた?」


