徒競走のリハーサルをしている律だった。
今年度、最上級生として学年対抗選抜リレーのアンカーに選ばれた律。
「位置について────」
スタートの合図とともに、律の身体が爆発的な踏み込みで前へと弾け飛ぶ。
しなやかな筋肉が躍動し、トラックのカーブを鮮やかに駆け抜けていく。
その圧倒的な速さと美しさに、トラックの周囲を取り囲む女子生徒たちから黄色い悲鳴のような歓声が上がった。
彩羽は吸い寄せられるように、その走る姿へレンズを向けた。
カシャシャシャシャシャッ!
連写音が指先から心地よく響く。
ファインダー越しに見える律の表情は、今まで見たどんな笑顔よりも真剣で、汗を散らしながら一点を見つめていた。


