過去の傷も全部、君の熱で上書きして。


今は''久しぶりに再会した先輩''という珍しさや勢いで好意を向けてくれているかもしれないけれど、もし付き合って、自分がまた重い感情を抱いてしまったら?

いつか必ず呆れられ、捨てられてしまうに決まっている。​


(またあの時みたいに傷つくのは、もう耐えられない・・・・・。)​


廉のことが好きになればなるほど、失うことへの恐怖が膨れ上がっていく。

一瞬触れた甘い夢から目を背けるように、結衣は自分の心に再び冷たい鍵をかけた。​


「ただの・・・先輩と、後輩。それ以上になっちゃ、ダメなんだから・・・・・。」​

誰に聞こえるわけでもない呟きは、暗い部屋の中に虚しく消えていった。​

だが、この時の結衣はまだ知らなかった。

彼女が必死で作り直した防壁など、
廉の重すぎる情熱の前には何の拒絶にもならないということを────。